自家用ジェットに乗ってみないか?
Published at 20:44 on Fri 16 November 2007
以前の記事からの続きやけれども、ノルウェーの主要都市ベレゲンへの出張の裏話の第二弾。
到着した日の翌朝、食べ放題の朝ごはんを頬張ってホテルの食堂に出て、ロビーで、取材目的のソフトウェア会社からの担当者を待つ。おっと。その担当者の名はオットさん。革ジャケットを羽織っていた彼がロビーに現われたのは、予定通りのちょうど時計が九時に回ったところだった。事務的に挨拶を済ませ、朝食ラッシュが終わり、客の数がずいぶん減った食堂に戻り、腰を下して、コーヒーを飲みながら二日間のスケジュールを確認する。
午前中は、製品ソフトを利用している顧客(船主さん)との面談が二つ。午後は空白となり、一緒に昼飯を食って市内観光でもしたらどう、と向こうは提案する。ケビオは頷く。夜は社長さん+αとの夕食会。二日目は、ベレゲンから結構離れたところにある本拠に足を延ばし、設備見学とソフトウェア開発者とのトーク。今回はけっこうゆったりとしたスケジュールとなっている。
革ジャケットに着けたピンバッジを最初気付いたのは、彼がスケジュールを説明している最中、視線がふっと顔からそらした時だった。それから、視線を直しても、なぜか、その鷲の翼のような形をした印がずっと気になっていた。説明が終わり、雑談になると軽く尋ねてみる。「そのバッジは何なんですか」
「飛行士のライセンスを取れて、もらったやつ。おれは、暇の時はだいたい自家用ジェットを空に飛び回っているんで、付けっぱなしになっちゃっている」とオットさんは何も気取らずにいて、疑問に答える。
はあ、と頭ん中に絶叫。「えっと、ノルウェー人では、自家用ジェットを持つのは普通ですか」と引き続いて聞いてみる。
「いや、いや。普通じゃない。おれ、飛行機を嵌っているだけなんだ。第一機をいったん買ったら、ついに第二機を買っちゃったし。それから、第三機をゲットしたのは今夏だった。奥さんは趣味についてうるさいけどね」
やれやれ。ケビオだって、飛行機が好きなところもあるが、だからといって自家用ジェットをもっているわけじゃないやん。買おうと思ったことさえ一度もないし。飛行機を三機も持って、どうするよ?
「維持費をカバーするだけ、貸し出しはしているよね」と言って、そして苦笑を込めながら「しないと奥は更に怒鳴るから」
とても同情を売るような場合じゃないよ、むしろ自業自得よ、という思いが頭をよぎる。
「怖くないなら、もし明日時間があったら、乗ってみないか?この近くに氷河があって、それを空から見るとものすごく綺麗よ」と誘いをかける。
えっ、マジっすか? 飛べるんだ。ほんまに飛べるんだ、ぼく怖くなんてないよ、と頭ん中に歓声がくり上げる。しかし、そのワクワクしている自分をどうか抑え、「時間があればいいですね」と、出来るだけ冷静で真面目に誘いを受ける。
「じゃ、そろそろ○○社に向かわないと~」と彼が言って、コーヒーを飲み干し、立ち上がる。でも、ケビオは顧客の話はあんまり集中できなかった。相手の伝わない英語のせいもあったが、それ何かよりも、頭ん中に歓声は絶えずに響き続いているから。明日、高く飛べるぞ。明日、パイロットの席に座れるぞ。氷河も見るぞ。
しかし結局のところ、ケビオは陸から離れることができなかった。飛ぶことを断念させざるを得なかったのは、本拠の人間との話が、オットさんが予想したよりずっと長くなったからなのだ。ま、その分、話は面白くて、記事を役に立つ情報をたくさんもらって、仕事の面から考えれば、素晴らしい成果だった。
でも仕事以外の面、~たとえば誰かの自家用ジェットをどうしても乗りたいという面~ から考えれば、台無しだった。ソフト開発者の話が長くなればなるほど、その後の自由行動(~つまり飛行~)の時間が減殺されていく。
取材がようやく終わったのは、もう二時過ぎだった。実家用ジェットを放っておいて、その日の夕方六時半に飛び立つ帰国の便を間に合うかどうかすら危なくなった。ベレゲンより南方面にある別の小島に位置する本拠までは、長距離バスを乗ったり、フェリーを乗ったりして、合わせて三時間近くもかかった。戻りは、ベレゲンの中心街から更に遠い空港まで行かなければならない。
オットさんもあせてきた。彼が最初考えたのは、空港まで実家用ジェットにのせて、送ること。(それ、それ、それ、と静かに応援するケビオだったが)空港に連絡を入れたら、着陸許可を得なかったから空振りとなった。次は、ヘリを持っている友人(そんなもいるの?)に連絡してみたが、うまく繋がらないままだった。それで、ケビオが、乗用民間機以外のヒコウキに乗るチャンスがゼロになった。仕方なく、マイカーで港まで道に飛ばす。港に到着したら、お別れの挨拶は「無事で帰るように頑張れ~」だけ。
ひとりでなんとか無事で空港に着き、帰国は滑り込みセーフ。
しかし、氷河を空から見られなかったことは、今でも、悔しい。すごく惜しい。じゃ、訳を作って、その会社をもう一度取材しに行かなくちゃ~ 今度は、三日間にしておく。
*なお、上記で、響きがいいから「自家用ジェット」という言葉を多々使用したが、厳密に言えば、ジェット機ではなく双発プロペラ機だったので、ご承知下さい。






Reader comments so far...
On 19 November 2007, chinoboo said:
自家用ジェット乗ってみたい!!!
いつかノルウェーに行ったときのために
私にもその人紹介して~!
On 25 November 2007, ケビオ said:
紹介してもいいが、どうやってCHINOBOOの話題を自然に切り出す。そこが問題よ。
この取材によるの記事を書いた時、最初は、乗せてもらえなかったことから、批判的に書こうと思った。しかし、そうすると、今後のチャンスを失くすだけので、むしろ、読んで喜ぶようにまとめた方が有利だと、思い直した。そして、いつか借りを返してもらう。